英語の総合力が問われるTOEIC part7。
単語や文法の知識だけで解ける、part5のように単純ではありません。そのため、何から対策すべきかわからない方も多いと思います。
また、TOEIC part7は勉強を始めても、その成果が出るのは数ヶ月も先になります。
「自分の勉強法が正しいのか」と不安になっている方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、TOEIC part7で安定的に得点するための方法をお伝えします。
結論は、一文を正確に読む「精読」と精読を素早く行う「速読」の練習を繰り返すことですが、精読と速読のイメージがつかみやすいよう具体的に解説します。
さらに、即実践できる解き方もまとめました。
他のリーディング対策が一通り終わったという500点〜600点の方や、part7の時短テクニックを知りたい方は、ぜひご活用ください。
TOEIC part7の特徴のおさらい
まず前提として、TOEIC part7の特徴を解説します。すでに知っている方は、おさらいとして流してもらっても、次に進んでもらっても構いません。
TOEIC part7の出題形式
TOEIC part7の問題形式は長文読解です。記事や広告、チャットといったさまざまなジャンルの文書を読んで、質問に答えていきます。
例えば、下記の画像のような問題です。
※TOEIC公式ページのサンプル問題を引用して作成した画像です。
英文と設問がセットになっているイメージで、いくつの文書に対して設問が用意されているかによって呼び方が変わります。
一つの文書に対して設問があるなら「シングルパッセージ」、文書が2つなら「ダブルパッセージ」、3つの文書なら「トリプルパッセージ」と呼ばれます。
それぞれの出題比率は次のとおりです。
- シングルパッセージ:10文書
- ダブルパッセージ :4文書(2文書×2セット)
- トリプルパッセージ:9文書(3文書×3セット)
意外とダブルパッセージやトリプルパッセージの問題も含まれていることがわかります。
TOEIC part7の問題数と制限時間
TOEIC part7の設問数は、100問あるリーディングセクションの中の54問です。
リーディング全体の半数以上を占めるpart7は、リーディングスコアを大きく左右すると言えるでしょう。
そんなpart7の目安となる解答時間は、1問あたり1分。文書や質問文、選択肢の英文も全て読むと考えるとかなり厳しく設定されています。
特徴をまとめると、1時間以内に23の文書を読んで54問の設問に答えるpart7は、リーディングスコアを左右する重要なパートと言えるでしょう。
TOEIC part7の長文読解が難しい理由
TOEIC part7の勉強法や解き方を考える上で、なぜ難しいと感じるかを明確にしていきます。
制限時間が厳しい
特徴の説明でも書いたとおり、1問あたり1分の制限時間がTOEIC part7を難しくしています。
1問あたり1分で解くには、1分間に最低でも150語のペースで英文を読み続ける必要がありますが、日本人の平均は1分間あたり100語です。
下記の文書はだいたい150語ほどですが、1分で読めそうでしょうか。
※TOEIC公式ページのサンプル問題を引用しています。
しかも、リーディングに取りかかるのは、リスニングパート後の疲れているときです。
そこから1時間ほどハイペースで読み続けることは難しく、最後の数問が塗り絵になってしまう人も多いでしょう。
飛ばし読みやスキャニングができない
さらにTOEIC part7は飛ばし読みが通用しません。細かな部分を問う問題も多いため、問題文全体を読む必要があります。
全文を読む必要があるということは、次のような長めの英文も読み飛ばせません。
“Our color samples are three times larger than typical samples found in home-improvement stores and come with self-adhesive backing, allowing you to adhere them to your walls so you can easily see how color will coordinate in your home.”
※TOEIC公式ページのサンプル問題を引用しています。
まとめると、TOEIC part7の長文は、ややこしい文章も正確に読める「精読力」、1分間に150語を読み切る「速読力」が必要です。
そのため、普段の勉強で精読力と速読力を高め、有効な解き方によりさらに時短を狙うといった対策を行います。
TOEIC part7の解き方
まずは、手っ取り早く実践できる解き方からお伝えします。
解き方には、さまざまなものがありますが、満点をとった人が言っているからといって決めるのは禁物です。
人によって合う解き方は変わるので、自分で試して合うものを選ぶようにしてください。
いつ解き始めるか決めておく
リスニングが終わったらpart7を解き始める人と、part5やpart6を解き終えてからpart7に取りかかる人に分かれます。
それぞれ良い点、悪い点を解説するのでご自身に合いそうな方を選んでみてください。
■始めにpart7を解き始める
part7から解き始めるメリットは、比較的クリアな頭で問題に取りかかれることです。
part5やpart6を解いてからですと、脳が疲れて集中しにくくなってしまいます。
しかし始めに解けば、集中しやすいでしょう。
一方でpart7に時間をかけすぎてしまうと、part5やpart6を解く時間が少なくなってしまいます。
part7の難しい問題で悩み、解けるはずのpart5で失点してしまう恐れがあります。
■最後にpart7に取り掛かる
最後にpart7を解けば、比較的解きやすいpart5やpart6にしっかり時間を使えます。
特にpart7が苦手で、part5を得点源にしたい人にとっては大きなメリットでしょう。
しかし、part5から解き始める場合は、part7での点数が伸び悩む可能性があります。
疲れのたまった頭で、最も集中力を必要とするpart7に挑むことになるためです。
どちらから解き始めるのが良いか、絶対的な答えはありません。ご自身で試して、合う順番で解くのが一番です。
英文を読み始める前にヒントを集めておく
part7に取りかかったら、冒頭にある「refer to〜」や英文中の太字、設問をあらかじめ読んでから英文を読み始めるのがおすすめです。
いきなり英文を読んでも良いのですが、なるべく集中力を節約するために、英文の手がかりを集めてから読み始めます。
例えば、問題を見るときは次のように目線を動かします。
※TOEIC公式ページのサンプル問題を引用して作成した画像です。
まず左上にある「refer to the following article」からニュースや雑誌の記事を切り取ったものだと分かります。
articleには硬めの表現が多いので、事前に心構えもできます。
次に英文をざっくり見ます。
今回は太字などがないのでスルーしますが、目立つ部分があれば、英文の内容を知るヒントなのでチェックしましょう。
その後は、設問に目を通します。
設問をどの程度読むかによって異なりますが、私は設問全てと、その選択肢の(A)(B)だけをチェックするようにしています。
設問ごとに英文を読むスタイルの場合は、1つ目の設問のみ目を通します。
「refer to 〜」から読み始めて、英文中にある強調された部分に着目するのは、どなたも共通です。
ただしその後に設問をどの程度読むのかは、実際に試してみて決めるのをおすすめします。
英文を先に読み通すか、設問ごとに読むか決めておく
英文を全て読み切ってから設問を解くのか、設問と英文を行ったり来たりして解くのかについても議論が分かれます。
それぞれのメリットとデメリットを簡単にまとめます。
■英文を全て読んでから設問に答える
英文を読んでから設問に取りかれば、解答根拠が十分な状態で答えられるので、安定して正解を選べます。
しかし、英文を読むことに慣れていない場合は、文書を読み終えた時点で、書かれていた内容を忘れてしまうかもしれません。
■設問ごとに英文を読む
設問と英文を交互に読むメリットは、1問1問を正確に解いていけることです。
先に英文を全て読んでも、内容を忘れてしまっては、読み返さないといけなくなります。
しかし、設問ごとに英文を読む方法が通用しないケースもあるので注意です。
例えば、1つ目の設問が文書後半まで読まないと答えられないケースもあります。
このように一長一短です。
読解が得意な方は先に英文を読むスタイル、苦手な方は設問ごとに読むスタイルがおすすめですが、実際に試して決めるのが良いでしょう。
ちなみに私は最初に設問と設問ごとの(A)(B)の選択肢を全て読み、一気に英文を読み切ってから解答します。
読み切ってから解答するといっても、実際は英文を読みながら、消去できる選択肢は消してしまったり、明らかに答えだと分かるものは選択肢に◯を付けてしまったりしています。
この方法でTOEIC950点を取ったので、よかったら試してみてください。
得意な出題形式と苦手な出題形式を知っておく
part7の英文には、広告(advertisement)、メール(e-mail)、チャット(text message chain)、記事(article)など複数の出題形式があります。
普段の学習の中で、自分がどの出題形式が得意で、どの出題形式が苦手かを把握しておくことが重要です。
自分が苦手か得意か分かれば、残り時間が少ないときにどの問題を捨てるか、どの問題に時間をかけるか判断しやすくなります。
TOEIC part7を時間内に最後まで解けるのは、900点台の中盤から後半の人だけです。
多くの人にとって、どの問題を捨てるかも点数アップのために重要な要素なので、特に苦手な形式はしっかり知っておきましょう。
一般的には英文が短いチャット形式が得意で、書き言葉であるarticleが苦手という方が多いですが、問題を解いた後の手応えをチェックしてみてください。
解きやすい設問と解きにくい設問を知っておく
設問の難易度を把握しておくことも重要です。
問題の難易度が分かれば、残り時間が少ない状況でも優先して解くべき問題が分かります。
記事(article)の設問が苦手な場合でも、簡単な問題だけ解いてから捨てるという判断も可能です。
そこで一般的に解きやすいといわれる設問と、解きにくいと言われる設問の特徴を解説します。
■解きやすい設問
比較的解きやすいのは、英文中の一部分だけ見れば分かる問題です。
具体的には、語彙の意味を選ぶ問題や、時間や場所を選ぶ問題が該当します。
例をあげてみます。
※TOEIC公式ページのサンプル問題を引用しています。
上記の問題は、ベナビデスさんの出身を問うもの。文中に該当箇所を見つければ、選択肢を吟味する必要なく、すぐに答えを選べるでしょう。
■解きにくい設問
一方で、与えられた英文全体を読まないとわからない問題もあります。
具体的には、質問文にNOTがある問題、文挿入問題、質問文にsuggest / indicate / implyが使われている問題です。
実際にサンプル問題を見てみましょう。質問文にNOTが使われている問題です。
※TOEIC公式ページのサンプル問題を引用しています。
「アネスリーさんがビジネスオーディオプロ(電話応対サービスの名前)に要求しなかったサービスは?」という質問文です。
与えられた英文の中に、(A)〜(D)のうちの3つが書かれているはずなので、それを全て見つけて、選択肢を消去するまで正解が絞れません。
続いて、suggestが使われている問題も見てみましょう。
※TOEIC公式ページのサンプル問題を引用しています。
「ベナビデスさんについて示されていることは?」という問題です。
もしベナビデスさんのことを説明する文を見つけたとしても、その時点では解答できません。
なぜなら英文を読み進める中で、他にもベナビデスさんについて述べる文が見つかる可能性があるからです。そのため、解答に時間がかかります。
このように設問の種類によって解きやすさは変わります。把握しておくと、上手に時間が使えるので便利なので、模試の設問を見直してみてください。
TOEIC part7に欠かせない精読の勉強法
part7を解くスピードを上げるためのテクニック的な部分をお伝えしてきましたが、ここからは、テクニックの土台でもある読解力を高める勉強法を解説します。
まずは、読解力の基本となる精読力を高める勉強法をご説明します。
精読力とは?
精読力は一文一文の文構造をつかむ力のことです。また、一文を複数の要素に分解する力とも言い換えられます。
この力があれば、一見長くてややこしい文でも要素ごとに分解して、分解したパーツごとに見ていけば訳が可能です。
そのため「単語や文法を知っているけれども、なぜだか訳せない」ということがなくなります。そして、安定して点数を稼げます。
文構造の把握は、TOEIC800点以上の上級者なら必ずと言っていいくらい当たり前に行っていることですので、ぜひ実践していきましょう。
精読力を高める手順
精読力を高めるためには、問題の丸付けを終えてからの勉強が重要。一つひとつの英文に対して下記に注意して文構造を把握していきます。
- 主語と述語(動詞)と目的語を明確にする
- 修飾部分は( )でくくる
さらに、本当に理解できているかを確認するため、下記をチェックします。
- 接続詞や指示語の意味が分かっているか
- 文中にわからない文法事項はないか
面倒に感じるかも知れませんが、急がば回れです。毎回手書きで文構造を書き込むことで、自然に頭の中でできるようになりますよ。
実際にやってみる
実際に次の英文を精読するために、文構造を書き込んでいきます。
“Our color samples are three times larger than typical samples found in home-improvement stores and come with self-adhesive backing, allowing you to adhere them to your walls so you can easily see how color will coordinate in your home.”
※TOEIC公式ページのサンプル問題を引用しています。
次の画像は、主語をS、動詞をV、目的語をOとして区切り、修飾語に( )のマークをつけたものになります。
続いて、接続詞や指示語をチェックしていきましょう。
この文では接続詞and、指示語them、接続詞soがあるので、それぞれ意味を考えます。
- and
→ 1文目の「are」と2文目の「come」を並列に並べる働き - them
→ すでに登場している複数形の名詞で、なおかつ文意に合うものなので、1文目の「our color samples」を表す - so
→ 「so that A can B」のthatが省略された形で「〜できるように」の意味
このレベルまで理解しながら、一文一文を訳していきます。
試験中にはもっと頭の中で簡易的に行いますが、慣れないうちは丁寧に書き込んでいきましょう。
区切り方がよくわからない方は、後ほど紹介する「おすすめの参考書」から構文解釈の参考書を1つ購入して読んでみてください。
TOEIC part7を時間内に解くための速読の勉強法
英文の文構造の把握が終わったら、速読力を高めるために音読します。
音読は最低でも10回は繰り返す
音量は小声でつぶやく程度で問題ありませんが、詰まらずに英文が読めるまで何度も何度も繰り返すのがポイント。
繰り返すうちに英語のリズムや読むコツがつかめてきます。TOEICで有名なヒロ前田講師も、最低10回は音読することを推奨しています。
また、繰り返し読むことには、TOEICの問題パターンを予想できるようになるというメリットもあります。TOEICでは似たような展開が何度も出題されるためです。
例えば、会社と会社が合併をするというニュースや、あらかじめ決まっていたスケジュールの内容の変更は定番です。予備知識があれば、大きなアドバンテージになります。
音読のスピードは、まず150WPMを目指す
読むスピードについて、始めは気にしなくても大丈夫ですが、どんどん速めていきましょう。
具体的には、まずリスニングパートでネイティブが話す速さで読めるようになるのを目指します。
この速さは1分間に150語を読むスピードで150WPMと言います。
その次はネイティブの話す速さの1.3倍である200WPM、さらに2倍である300WPMと目標を上げていきましょう。
TOEIC公式ページの「TOEIC公式教材の効率的な使い方」より引用しています。
解き終わった問題文を繰り返し音読することで、速読力が上がり、問題パターンが予想できるようになります。
メリットが大きいので最低10回は繰り返して音読するように習慣づけてしまいましょう。
TOEIC part7の勉強におすすめ参考書
最後におすすめの参考書として、構文解釈の参考書2冊と、問題集3冊をご紹介します。
『英文読解入門 基本はここだ!』
「文法と単語は勉強したけど、読解はずっとなんとなくでやってきた」という方に、特におすすめの構文解釈の参考書です。
英文の構造をどのように把握するかが非常に丁寧に解説されています。量が多くないので、とっつきやすいのもポイントです。
『肘井学の読解のための英文法が面白いほどわかる本』
TOEICで800点以上を目指すなら、本書で構文解釈の勉強をするのがおすすめ。
『基本はここだ!』に比べると文量が多く、やや難易度の高い例文も扱っています。
ただし解説はかなり丁寧なので、初学者でもしっかり読めば問題なく理解できます。
『公式TOEIC Listening & Reading 問題集』
問題集で一番おすすめなのは、公式問題集の最新版です。
本番の試験を作成しているETSが作った問題なので、最も本番と近い模試を受けられます。
最も点数アップにつながる問題集なので、解いたことのない方は、真っ先に時間を測って解いてください。
『世界一わかりやすいTOEIC L&Rテスト総合模試1[600点突破レベル]』
「公式問題集を解こうとしたけれども、難しすぎる」という方におすすめなのが本書です。
本番よりも基礎的な問題の数が多く、解説も詳しいので英語に自信のない方でも挫折せずに取り組めます。
筆者の関講師は解説が非常に本質的でわかりやすいので、高得点者が見ても学びがあるでしょう。
もし高得点者で関講師の解説を受けたい方がいれば、姉妹版の『世界一わかりやすいTOEIC L&Rテスト総合模試2[800点突破レベル]』がおすすめです。
『TOEIC(R) L&Rテスト 究極の模試600問』
「直近に発売された公式問題集を全て解いたけれど、さらに問題演習をしたい」という方には本書がおすすめです。
「公式問題集の次に本番に近い模試」と言われるほど本番そっくりで質の高い問題を解けます。
また解説にも定評があります。1500名以上のモニターの解答をもとに、間違えやすいポイントが分析されているなど、類書にはないこだわりが詰まっています。
とても魅力的な問題集なので、迷っている方はぜひ手にとってみてください。
まとめ:TOEIC part7の長文対策は地道な勉強しかない
TOEIC part7の長文問題は、制限時間が短いにもかかわらず、飛ばし読みができません。
そのため、ややこしい文章も正確に読み解く力と、スムーズに読み進める力が必要になります。
この特徴をふまえて、次のような対策がとれます。
- 本番の解き方を工夫してスピードを上げる
- 普段の勉強で地道に精読と速読の訓練をする
解き方は、人によって合う合わないがあるので実際に試してから選ぶことが、普段の勉強は、文構造を手で書き込んで最低10回は音読するという地道な継続が重要です。
特に、文構造の手書きと音読の繰り返しは大切なので、面倒がらずに毎日続けていってください。
なかなか成果が見えないTOEIC part7ですが、時には立ち止まりながらも基礎を積み上げることで、突破口が見えるはずです。ぜひ今回の内容を参考に学習を進めてみてください。