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【日本語音声】イントネーションの不思議

日本語イントネーション

みなさん、こんにちは!
今回の特集は「イントネーション」です。

イントネーションは、文や語句のまとまりを表し、話者の意図まで変えてしまう大切な要素です。

イントネーションとは、いったい何者なのでしょうか。
今回は、そんな不思議なイントネーションの世界に迫ります。

【日本語音声】イントネーションって何?

まずは、イントネーションがどんなものかについて説明します。

【日本語音声】イントネーションの定義

イントネーションとはいったい何でしょうか。
三省堂『明解言語学事典』から以下引用します。

文や発話全体の高さのパターンのこと。

これだけではよくわからないと思うので、例を見てみましょう。
次の文を読んでみてください。

「お菓子を食べる。」

多くの人は、語尾を上げずに読んだと思います。
では、次は語尾を上げて読んでみてください。
それだけで、「お菓子を食べますか」というニュアンスの「疑問文」になりますね。
これが、「イントネーション」の差なのです。
このような、ニュアンスや意図を変える音の高さのパターンを「イントネーション」と言います。

アクセントとの差は?
「イントネーション」と似た言葉に「アクセント」があります。
しかし、両者は別のものです。
イントネーションは文や発話全体のレベルの話です。
一方で、アクセントは語のレベルの話です。
例えば、「箸」と「橋」はアクセントが違いますが、イントネーションが違うとは言えません。
アクセントについて詳しく知りたい方は、前回の記事をご覧ください。
【日本語アクセント】日本語のアクセントの不思議

【日本語音声】プロミネンスについて

ここで、「プロミネンス」についても触れておきます。

プロミネンスは、いわば文の中で強調したい部分を際立たせて読むことです。

例を見てみましょう。

「昨日友達と遊んだ。」

「昨日」の部分を強調して読んでみてください。
おとといでも一週間前でもなく「昨日」遊んだというニュアンスが伝わりますよね。
また、「友達と」の部分を強調して読んでみてください。
家族とでも恋人とでもなく「友達と」遊んだことが重要だと伝わります。
このように、伝えたい事柄に応じて一部分を強くゆっくりと発音するのが「プロミネンス」です。
プロミネンスは「卓立(たくりつ)」とも言います。

プロミネンスは本によってはイントネーションの一種とされています。
この記事でも、プロミネンスはイントネーションの一つの機能として扱っていきます。

【日本語音声】イントネーションはどう決まる?

先ほど、疑問の意味を表すときにイントネーションが変わることについて触れました。
それでは、イントネーションを決める他の代表的な要因について見ていきましょう。
以下は、『明解言語学事典』(三省堂)『日本語音声学入門』(三省堂)を参考にしています。

【日本語音声】文法構造の差

イントネーションは、文法構造にも影響を与えています
次のフレーズで考えてみましょう。

「小さな子供の靴下」

イントネーションを変えることによって、小さいのが「子供」なのか「靴下」なのかが変わってくるのです。

同じようなことが文単位でも起こります。

「昨日買った本を読んだ。」

文章を見るだけでは、本を買ったのが昨日なのか、本を読んだのが昨日なのかがわかりません。
では、イントネーションを変えてみましょう!

図で表すと、以下のようになります。

上のように読むと、本を読んだのが昨日です。
下のように読むと、本を買ったのが昨日です。

このように、文の意味を大きく変えられるのが「イントネーション」なのです。

【日本語音声】意味関係の差

「冷たい食べ物」
「冷たい氷」

実は、ここにもイントネーションの差が出ています。
「冷たい食べ物」というのは、食べ物の中の一部を指しています。
食べ物というのはたくさんあって、熱い料理もあります。
一方で、「冷たい氷」と言うときの「冷たい」は、氷の性質を説明するものです。
「氷は冷たい」と言い換えることもできます。

このような意味の差によってもイントネーションは変わります

【日本語音声】感情の差

感情の差も、文全体の高さや高さの幅を変えていきます。
例を見てみましょう。
「食べる?」と聞かれた際の返答で考えます。

もう空腹でたまらない中で食べ物を差し出されたときの

ねこ学徒
ねこ学徒
食べる!!!!

お腹はそこまで空いていないけれど時間だからという場合の

ねこ学徒
ねこ学徒
食べる。

前者のほうが、高さの幅が大きくなっています。

一般に、興奮しているときは音が高く、高低の幅は広くなります。
逆に冷静なときは、音が低く、高低の幅は狭くなります。

【日本語音声】まとめ:意味の決め手!イントネーション

日本語を話すときに、イントネーションは意味の決め手になります。
極端な話をすれば、「お茶」という一語文(一つの単語でできた文)でもたくさんの意味を表せます。
実際に読んでみてください。

「お茶!」「お茶?」「お茶。」

意味が変わってくるのがお分かりいただけるでしょうか。
普段は意識しないイントネーションですが、実はあなたの会話でも大きな役割を果たしています。

参考文献
斎藤純男・田口善久・西村義樹(2015)『明解言語学事典』p.14 三省堂
斎藤純男(2006)『日本語音声学入門』p.125-135 三省堂

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夜猫
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東京外国語大学国際日本学部2年 日本語学・日本語教育学見習い中 文字オタク お気に入りの文字はမြန်မာဘာသာ と ᐃᓄᒃᑎᑐᑦ と አማርኛ とසිංහල