大家好!
単純方向補語をマスターしたあなたの最終ステップ!
単純方向補語を合わせていきます!
語順に注意が必要です!
複合方向補語とは
複合方向補語とは、単純方向補語が二つ重なったものです。
基本形:
<動詞> + <単純方向②> + “来/去”
<動詞> + <単純方向②> + <場所> + “来/去”
<動詞> + <単純方向②> + “来/去” + <非場所>
例:
“他们走过来了。”
―彼らは(歩いて)やってきました。
“我飞到北京去。”
―私は北京に飛んでいきます。
単純方向補語①で、”来” と “去”を、単純方向補語②で、”上” “下” “进” “出” “回” “过” “起” “开”を学習しました。
今度はそれを合わせるだけ!
具体的な合わせ方については、以下でじっくり説明します。
複合方向補語の特徴
ここでは複合方向補語の特徴について説明します。
複合方向補語の作り方
基本的な作り方は、
“来/去”以外の方向補語+ “来/去”
ですが、いくつか使われないもの、特徴的なものがあるので以下の表で確認しましょう。
上 | 下 | 进 | 出 | |
来 | 上来 | 下来 | 进来 | 出来 |
上がってくる | 下がってくる | 入ってくる | 出てくる | |
去 | 上去 | 下去 | 进去 | 出去 |
上がっていく | 下がっていく | 入っていく | 出ていく |
回 | 过 | 起 | 开 | 到 |
回来 | 过来 | 起来 | (开来) | 到~来 |
戻ってくる | やってくる | 起きてくる | (離れてくる) | ~まで来る |
回去 | 过去 | × | (开去) | 到~去 |
戻っていく | 向こうにいく | × | (離れていく) | ~までいく |
注意
- “起去”は使いません。
- “开来” “开去”はあまり使いません。
- “到~来/去”は目的語が間に挿入。
複合方向補語と目的語の語順
語順には注意が必要です。
目的語なし:
<動詞> + <単純方向②> + “来/去”
例:
“他们走过来了。”
―彼らは(歩いて)やってきた。
目的語あり:
①<動詞> + <単純方向②> + <場所> + “来/去”
例:
“小明走进教室里去了。”
―明くんは教室に入っていった。
※ “了”は文末につけます。
②<動詞> + <単純方向②> + “来/去” + <非場所>
例:
〇”我给他送过去了一件衣服。”
―彼に服を送ってやった。
×”我给他送过了一件衣服去”
※ “了”は文中に入れます。
このように複合方向補語では、単純方向補語の場合とすこし異なります。
<非場所>は基本的に “来/去”の後ろに置かれます。
<非場所> + “来/去”の語順について
様々な教材に、この語順が最も基本的である!と書かれていますが、本当でしょうか。
「目的語が移動できるものであれば <非場所> + “来/去” でよい」といった記述をよく目にしますが、複合方向補語においては以下の通りだと考えます。(筆者考察)
×目的語が移動可能
〇動詞が目的語を直接的・空間的に移動させる意味が強い
例で確認します。
?我妈买回一条鱼来。
〇我妈买回来了一条鱼。
―母が魚を一匹買ってきた。
??他卖出一套房子去。
〇他卖出去一套房子。
―彼は家を売り出す。
※派生義的ではある
一般的な教科書の説明に基づけば、それぞれ上の文は「問題ない」ということになります。しかし、実際にネイティブに意見を聞くと「不自然である」「非文である」という意見が飛んできます。(特に、台湾華語では使われず、大陸普通話の口語で使われることがあるだけ。)では、どんな場合に語順を特殊にできるのでしょうか。
条件まとめ:
- 動詞は、目的語を空間的に移動させる意味が強い。
- 方向補語の1つ目は、 “出”が多い。
- 方向補語の2つ目は、 “来”が多い。
- 目的語は、移動可能である。
例で確認してみます。
「彼は大テーブルを運び出してくる/いく」等
〇他搬出来一张大桌子
〇他搬出来了一张大桌子
〇他搬出去一张大桌子
〇他搬出去了一张大桌子
〇他搬出了一张大桌子来
〇他搬出一张大桌子来
??他搬出一张大桌子去
※ “来”が文末に来るものに関しては、後続する文が欲しいというネイティブが多い。
まとめを見ながら理由を考えてみてください。そして、今すぐ使える常用パターンも確認しておきましょう。
“掏出”(掻き出す),
“拉出”(引き出す),
“捞出”(すくいだす),
“拿出”(取り出す),
“搬出”(運び出す) など
この場合は、目的語を置く位置が選べます。
例:水餃子をすくいだした。
我捞出了水饺来。
我捞出来了水饺。
※ “了”は文中に挿入します
例えば、 “回来” “过去” などは分解されにくいのです。
「魚を一匹買ってくる。」
?”买回一条鱼来”
〇”买回来一条鱼”
〇”买一条鱼回来”
※最後は連動文
「資料をひとつ送ってやった。」
×”送过了一份资料去”
〇”送过去了一份资料”
〇”送了一份资料过去”
※最後は連動文
つまり、
自身や物を直接的に移動させる動詞があれば、目的語を “来/去”の直前に置くことができる。
複合方向補語の”开来”と”开去”について
この二つの複合方向補語はほとんど目にすることがありません。参考書でも解説や用例を載せているものが極めて少ないと思います。が、好奇心の高いあなたにお伝えしておきます。どちらも意味としては、
“开来”
⇒広がって/離れて くる
“开去”
⇒広がって/離れて いく
と解釈することができます。(“开来”は状態持続のイメージが加わることがある。)
“开”というのは、本来「しまっている⇒あいている」という変化を表す語であるから、方向補語と認めるのが難しいものであり、抽象的なイメージをもちやすい語であると考えます。(考察)
“开来”
①方向の意味
“病毒造成的坏影响开始在新兴市场扩散开来。”
―ウィルスがもたらした悪い影響が新興マーケットに拡散し(広がっ)てきた。
“病毒会迅猛地蔓延开来”
―ウィルスが凄まじい勢いで蔓延してくるはずだ。
“展开来”
―展開してくる
②派生意義(離れる感覚)
“把不同的部分分割开来。”
―異なるところを(しっかりと)分ける
“把A和B区别开来。”
―AとBを区別し分ける
“推开来”
―押して(しっかり)開ける
“开去”
方向の意味
“扩散开去”
―拡散し広がっていく
“荡漾开去”
―波うち広がっていく
※用例は非常に少なく「使ったことがない」というネイティブも多い。
ネイティブとの考察の中で、「躲避开去」や「急忙逃开去」は言うが「躲避开来」などとは言わないとあり、「離れていく意味の動詞は “开去”とのみ結合する」という意味で後述資料の意見に合致した。
また、「“扩散开去”と “扩散开来”は同じ意味」と言うネイティブもおり、後述資料の「在表达趋向意义时,”V+开来/去”是可以互换的」(方向を表すときには、 “V+开来/去”は交換可能である)という分析に合致した。※「“扩散开来”は結果を示す」と言うネイティブもいた。
一番わかりやすいコメントをくれたネイティブもいた。
“扩散开去”は、インクを水に垂らした時の感じ
これはわかりやすい表現ですね!
“V + 开来/去”の用法や認知感覚については、朱徳熙の文献に対する考察を込めた計5ページの『“V开来”与“V开去”语义异同的认知理据』(姜宁宁 2017)に詳しく、大変わかりやすい。
複合方向補語の例文
それでは最後に例文を見てみましょう。
“他慢慢地拿出来了一笔钱。”
―彼はゆっくりといくらか取り出した。
“站起来!”
―立ちなさい!
“我们爬上去吧。”
―上っていきましょう!
“小明家搬到东京去了”
―明くんの家は東京に移っていった。
“他们回到门口来了”
―彼らは入口まで戻って来た。
“你用这个软件时,应该把一个字一个字分割开来”
―このソフトを使うときは、一文字一文字しっかりと分けるべきです。
“他们已经走下去了。”
―彼らはもう下っていきました。
まとめ:複合方向補語は、単純方向補語がある規則の下で二つくっついたもの。
今回は、複合方向補語の方向を示す用法について詳しく見てみました。
中国語は左から右に発生状況を叙述することが多いのですね。
しっかり覚えたら、今度の「派生意義」についても考えていきます。
文法事項を1つ1つ積み重ね、中国語マスターへの道を進みましょう!